厳選された良質の原料から精鋼したV2C、V1およびV2は刃物鋼に有害な、P,S,Cu,As などの不純物を極力少なく抑えています。
従って刃物鋼として非常に大切な切れ味に大きく貢献しています。V2C, V1及びV2には次のような特長があります。
1. 不純物が少ない
2. 熱処理が容易
3. 加工性(火造り鍛造性)がよい
特にV1およびV2には小量の Cr を添加してあります。このCrの添加は焼鈍や焼入等の熱処理での改善をおこない、 靱性や焼入性の向上に寄与しています。
厚刃物、薄刃物においても、十分な焼入硬度が得られ、刃物として、 折れず曲がらず、耐久性に優れています。刃物で大切なことは、セメンタイト(炭化物)を微細球状化させることです。これによって焼入れ後の靱性が増強され、焼き割れ防止に寄与します。焼鈍しは時として焼入れに比べて軽視されがちですが、火作り鍛造においても、炉冷、灰なましなどの徐冷を行うべきです。V2C、V1およびV2は焼鈍し球状化がたやすい刃鋼です。
C | Cr | Ni | 焼入硬度 | |
---|---|---|---|---|
V2C | 1.00 | ≦0.30 | ≦0.10 | HRC64以上 |
V1 | 1.15 | 0.40 | ≦0.25 | HRC64以上 |
V2 | 1.00 | 0.40 | ≦0.25 | HRC64以上 |
白2は、Ni,Crが添加 してあるので、焼入性はSK類の炭素鋼に比べると良好で、厚物の焼入には最適です。
靱性も良好で、薄刃物では、鋸・包丁類の鋭利刃物から、厚口刃物では斧・鉈・機械刃物など、幅広い用途が可能です。焼鈍作業では、球状化が容易なので、後続の行程で焼入、焼戻しをおこなわれた刃物は、セメンタイト(炭化物)が微細均一に分散した状態になります。従って靱性が向上して、刃欠け・チッピングなどが回避され、長切れに貢献します。さらに、Ni,Crの添加により結晶粒が微細化します。焼き入れ温度への感受性が鈍いので、焼入温度(オーステナイト化)が、わずかに高温側へずれた場合でも、マルテンサイト粒の粗大化は少なく、従って製品ロット間のばらつきも小さくなり、品質が安定します。
C | Cr | Ni | 焼入硬度 | |
---|---|---|---|---|
白2 | 1.00 | ≦0.30 | 1.00 | HRC63以上 |
※当サイトに記載の化学成分値は、各鋼種の規格値における代表的なデータを示しております。